其の20:秋
■ 其の20:秋 ■
イツ花が竜川のお家に来てから何度目の秋が来たでしょう。
いえいえ、もちろん覚えておりますとも。
毎年同じようにめぐる季節、当たり前のその繰り返しが
実は一つとして同じじゃないってこと、ちゃんと知っていますから。
あの春や、あの夏、あの冬を
一所懸命生きてこられた一人一人のお顔を
イツ花は全部、はっきり覚えていますから。
つらいことや悲しいことはたくさんありましたけど
皆様と過ごした時間は、どれもかけがえの無い宝物なんです。
一族の呪いが解けて、
皆様がお腹の底からおもいっきり笑える日が来るのを
イツ花は毎日毎日願っているんですよ。
でも、たま〜に
ほんのちょこっとなんですけど、ふと考えちゃうことがあるんです。
そうして長い戦いが終わったあとで……
イツ花は、どうなってしまうんでしょうねぇ。

え?「そんなの昼子様に聞けばいい」?
さぁ、どうでしょう。
昼子様は案外おとぼけですから
『実はぜ〜んぜん考えてなかったの!エヘ☆』
な〜んて、言うかもしれませんよ?
(ワトソン水彩紙/透明水彩/カラーインク)