其の31:雪の降る夜
■ 其の31:雪の降る夜 ■
ここにあなたがいるなら、
笑おうとして泣くだろう
もしもあなたに出会えても
遠くからそっと見送ろう

あの頃と現在の間に、見えない亀裂があるから
まだ一人では渡れない

あなたがそこにいるだけで……
あなたの腕は温かで、
とても優しくなれたの
手のひらから飛び立ってく
思い出をいま見送ろう

(「真昼が雪」/歌:坂本真綾/作詞:岩里祐穂 より)


お題は夜がテーマなのに引用した曲が「真昼〜」なのは、ご愛嬌という事でひとつお願いします…(^^;)
其の31は、“玄武の娘”であり“比鼓能の母”である薙刀士、巻(まき)でトライさせて頂きました。 髪を解いているのでわかりづらいですが、下3・右3のおさげっ子ですよ。
左側にうっすらと居る(…)のは、彼女の想い人の焔幽です。 追想のイメージのつもりで描いたのに、なんだか幽霊っぽくなってしまった…orz
焔幽と巻は9ヶ月歳の差があり、幼い頃から訓練期間の面倒を見てくれたり遊んでくれたりしていた焔幽兄さんを 巻はずっと慕っておりました。
最初は巻を歳の離れた妹のように思っていた焔幽も、晩年には、精神的にギリギリ状態だった自分を 救おうと必死に側にいてくれる巻に惹かれていくのですが、まぁ上記リンク先のような事情もあり、 結局生きている間に気持ちを伝え合う事はできなかったのでした。
お題絵は、焔幽が亡くなって数ヶ月が経った師走の頃。
焔幽の死後、巻は焔幽への恋心など無かったかのように気丈に振舞うようになります。 自分自身にも、「もう終わってしまった事なんだから早く諦めるんだ」と何度も言い聞かせ、実際平気になったようなつもりになったりする。
けれども、実際はそうして平気なふりをする度に焔幽を思い出し、パンパンになっていくのであります。……と、そんなイメージで。(説明長いよ)
なんだか暗い雰囲気の話になってしまいましたが、最終的には巻の様子を見兼ねた当主に背中を押される形で、氏神になった焔幽と交神し、 互いの想いも伝え合うことはできたので、ハッピーエンドな二人ではあるのです。
恋人同士として共に生きることはできなかったれども、 短い余生の中で、巻さんは想い人との間に授かった娘を懸命に育て上げたのでした。
(クラシコ5水彩紙 中目/カラーインク/ソフトパステル)