■ 触るな ■
今回は08年のカップルTOP絵特集で描きたかったけど出しはぐった二人をご紹介させていただきます! 剣士息子が大牙(たいが)、弓使い娘が千羽矢(ちはや)。それぞれ獅牙と弓弦の親にあたる子達です。 千羽矢の方が2ヶ月(多分)ほど年上。
大牙は幼い頃から一族に馴染まず、悲願成就への使命感も持てず、己の命も顧みずにひたすら鬼を狩る事にのみ執心する息子でした。
一方の千羽矢は、マイペースで明るい気性の持ち主ですが、非常に身体が弱く、まともな戦力としては数えられない娘でした。
「力こそ全て」が信条の大牙は、はじめのうち弱い上に討伐の足手まといになりがちな千羽矢が目ざわりで思い切りシカトしていたのですが、千羽矢は意に介さず、独りを好み孤立する大牙に近づいては無理矢理傷の手当をしたり話しかけたり、何かにつけて構うのでした。
絵はそんな千羽矢の手をウザがってはねつける大牙の図(でもこの後千羽矢に無理矢理治されます)。
そのうちに、大牙の方は避けるのが面倒なのと単純に慣れてしまったのとで千羽矢を遠ざけることを半ば放棄し(笑)、千羽矢はそれをいいことにちょくちょく大牙の傍にいるようになります。
千羽矢は来訪時から虚弱体質のために周囲に気を遣わせている己を不甲斐なく感じており、またそんな不甲斐ない自分への一族らの気遣いを少し重荷に感じながら明るく振舞っているところがあったため、 自分を容赦なく「足手まとい」と切り捨て、一切特別扱いしない大牙の傍をかえって居心地良く感じていたのでした。
一方大牙も、近くで見ているうちに千羽矢の抱えるジレンマと、それを感じさせない心の強さに気づき、彼女に対する時だけはほんの少し頑なさが和らぐようになるのでした。
そんな風に、お互いなんとなく相手に惹かれながらも、その気持ちを恋と認識しないまま終わってしまった二人。またそのうち他の面などもお目にかけられたらと思います。
(ワトソン水彩紙/透明水彩/カラーインク)